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2010年05月28日

ブラウン管の次に消えるべきなのはムービングコイル

ヘッドフォンで聞くiPhoneに感動し、勢いでポストしたので推敲せねばと思う一つ前のエントリー。ちゃんと推敲するためには適当に書いていた機種名を見てこないといけない。
そんなわけで、かの試聴コーナーに再び出かけて写メを撮ってきました。店員に怪しまれることなく、無事完了。

取りかかる前に、音の表現方法の言葉を知らなければいけないと思ってネットの記事をいくつか見ておかねばと思った。
で、型番で出てきた最初のページを見たのですが、予想外のことが書いてあるので考え込んでしまいました。
http://review.kakaku.com/review/K0000063730/

アマゾンのカスタマーレビューはおおむね気に入ってる人が推薦している感じで、それには同意できました。
びっくりしたのが価格コムの口コミ掲示板。ATH-WS70を、低音が出ないと言ってる人がいるのです。XB700の方が低音が出ると書いてあるものがいくつか。
この中に出てくる、ソニーのXB700は試聴したものの中にあったので、音もわかります。
ATH-WS70とは全く違った傾向の音。二つの音の違いも自分の中ではっきりしている。

XB700は音像は固まっていて、音場感という言い方をすると広がらない感じ。主に低音がブーミーななり方をしているからなおさらそう感じた。確かに音程感のある200Hz位のところはATH-WS70より景気よく出ている気がする。しかし、そのずっと下の、音程感のなくなる100Hzより下のところの低音は確実にATH-WS70のほうがしっかり出ているし、もっと下の帯域が持ち上がっているのか、ホールの鳴りというか空間の鳴りみたいなものが感じられて迫力がある。

まず、ATH-WS70の優れているところ。
XB700とATH-WS70の音は前者がウォーム系で後者がクール系なんだとおもうけども、なんといっても後者の方がリニアリティー(強弱に対する再現能力の高さ)が断然優れていて、上級クラスのヘッドフォンを凌駕するのではという感じがする。
ONに録られた音源とOFF気味でプレゼンス感たっぷりの音源が重ねられているような昔のポップスやドラムスが入ったクラッシックのメドレーみたいなものでも楽しく聞ける。リニアリティーが良くないイヤフォンで聞くCDのなかには、頭の中のあちらこちらでバラバラに音が鳴っていたり、やたら遠いオケの伴奏に、エコー無しの生ボーカルが歌うような違和感のある音楽に聞こえたりするものがあるのですけど、そういうCDでも、楽しくひとまとまりの音楽として楽しめるのが、このATH-WS70です。
音楽として聞く楽曲は必ずエコー処理されているものですけど、そのエコーの流れる方向や広がり方がしっかり確認できるのも、リニアリティーに優れている証拠だと思います。

さて、このヘッドフォンのレビューで「低音が不足している」と言い出す(そう聞こえる)人がいるのを知って、改めてはっと思ったことがあります。
それはスピーカーシステムでいう、「バスレフのチューニング」です。

現在のスピーカーは、ほとんど全部がムービングコイル式。これは、磁界の中においたコイルに電流を流すと力学的な力が発生するという現象を利用したもの。モーターが回るのもこの理屈。モーターは電力を与えると際限なく回ります。ムービングコイルも同じで、電力が与えられたら動くんですけど、バネがついていて、電力による力とバネの力が均衡する位置まで動くと止まるし、電力がなくなるとバネが元の位置に引き戻すようにできている。バネが入った系なんですが、このことによって共振現象というものがついて回ることになり、話をはしょると、スピーカーには最低共振周波数というものが存在することになると言うことです。電気的にはその周波数でインピーダンスが上昇することになり、インピーダンスが上昇すると言うことは現在の回路のアンプでは電力が供給しにくくなると言うことになり、結局の話スピーカーが低音を出しにくいのは原理的なことが原因という話なんです。

その最低共振周波数というのは100Hz前後のものが多かったりしますから、世の中のスピーカーというもので音楽の低音を楽しもうと思ったら、一ひねりもふたひねりもしてある製品でなければムリ、という仕組みになっていたりします。

スピーカーユニットを密閉式の箱に入れてスピーカーシステムを作り、周波数特性を取ると、なだらかに低音にいくに従って音が小さくなる特性になるものが多く、それを改善するための一つがバスレフシステムというものです。これは、箱に低音の共振を持たせたものです。ギターの胴も共鳴箱ですけども、ギターの箱の共鳴は割と幅広い周波数で共鳴するように作られているのに対し、バスレフスピーカーは特定の音にだけ共鳴するように作られます。スピーカーユニットの最低共振周波数とその箱とのかんけいで、なだらかに低音が出にくくなる密閉箱よりも、フラットな特性の低音が出せるようになるのですけど、あるところでストンと落ちる特性になります。バスレフの共鳴周波数をもっと下げると、もっと低いところまで低音が出せるようにチューニング出来まが、広がる手前の(上の)周波数のところに、くぼみが出来ます(鳴りにくいところが出来る)。くぼみが出来ても、低いところまで鳴るようになって迫力が得られたら成功だし、かえってそれで低音の量感が不足してしまうこともあり得て、これは実際にテストしてほどよいところを探る、なんてことが行われたりします。
 これを高度に複雑に行ったものがBOSEのアコースティックなんとかシステムというもので、びっくりするほど迫力ある低音が出るのだけど、ふくよかななりの低音楽器のニュアンスは出せなかったりすると言う、まぁ、そんなものもあります。
 これはムービングコイル方式のスピーカーを使う以上はずっとこんな調子なんだろうと思います。
 エジソンからちょっとあとずっと続いているわけです。
 ブラウン管はようやく最近製造中止になりました。
 次はムービングコイル式のスピーカーの代わりになる何かが発明される番だと思います。スタックスの静電式というものが古くからありますけどドライブユニットが特殊で高価なせいか全く普及してる様子はないようです。

 で、話が脱線しましたけど、ATH-WS70も、バスレフ式のスピーカーユニットの話と同じような感じの低音であることは感じていたので、「低音が不足している」と書いた人がいると言うことは、これに関係しているのかもしれないと思いました。
 そして、ソース(聞いたCD)はなんなのか気になるところです。

 ATH-WS70はソリッドベースシステムというユニットの後ろ側に共鳴空間があって低音が強調されているという話なので、聞こえにくい(窪んだ帯域)周波数が出来てしまっているのかもしれません。そこの部分の音が入っているCDを普段聞いている人がこのヘッドフォンを使ってしまったのかもしれないと思うと、あり得る話です。

 で、ATH-WS70を使って、「荒井由実」の「ひこうき雲」を聞いていたときに、バスドラが聞こえにくいということを発見。このアルバムは元々バスドラは小さな音で聞こえます。このアルバムに限らず、低音域がタイトな音で収録されているCDを十分な低音間で再生できる装置というのはあまりない気がします。ビリージョエルの最初の方のものも低音の録音技術は優れている(低い音までしっかり録られている)けども、響きがタイトなので装置を選ぶ気がします。ひこうき雲を収録したのはスタジオアルファで、ここの録音もアナログ時代にしてはタイトなドラムだったようで、この辺の事情があるのか(聞く装置しだいでしっかり響く低音なのかもしれん)、とにかくひこうき雲のバスドラは、私には小さく聞こえています。(アルファスタジオは埋め込みのツインウーファーがモニターで、ドラムのブースは石畳になっていたとかで、録られた音を聞いていて個性的に感じるけどもそれは録音エンジニアにもそれなりの何かポリシーがあるんだと思う。これはこれで調べてみるとおもしろいかもしれないけどはまり込みそうだからしない笑)
 そのひこうき雲のバスドラがATH-WS70で聞こえない場面がほとんどになってしまっています。
 試しにビクターのNC80につなぎ替えて聞いてみると、なんと、聞こえるではあーりませんか。

 うーむ。
 これはどうしたもんか。

 チューニングをが変わった次モデルが出るのか期待することにしようっと。

 バスレフのチューニングのような共鳴系の音というのは、共振Qというものがとても高いので、1/3オクターブバンドのグライコみたいなものでは、上の窪んだ帯域を持ち上げるなんてことはちょっとムリです。Qを可変することが可能なパラメトリックイコライザーでも、かなり極端な設定にしないといけないはずだし、悪影響もあると思います。特定のCDを聞くために割り切ってそれをやってみることもおもしろいかもしれませんが、数十万しそうな機械を7000円で購入できる装着感のきついATH-WS70でやるのも現実味がないですよね。

 まあしかし、聞こえるものが聞こえない今回のパターンは特別な例だとおもわれます。
 ATH-WS70の迫力低音はこれはこれでおもしろいし、今のところ私には空間構成力と名付けられるかもしれないこのヘッドフォンの能力は、いろんな音楽を楽しく聴かせてくれる存在ではあります。弦楽器がリアルだしなんといってもピアノが軽やかに鳴って鳴ってくれるのが嬉しいです。
 クラッシックも楽しいです。低音強調がちょっと大げさで、クラッシックの場合コントラバスがこんなに鳴り響いているホールなんてあり得んと思いつつも、脳内補正しつつ聞いてしまうと言うわけです。(ATH-WS70のひこうき雲ではフロアタムの音があり得なく大きく聞こえますけど、MP-NC80ではバランスの取れた音量で聞こえます。ATH-WS70はバスドラが消えて、フロアタムがでかく聞こえる)



Posted by ひで at 19:51│Comments(0)
 
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ブラウン管の次に消えるべきなのはムービングコイル
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